
私たちの生活を支える日本の川や道路などのインフラには、「1級」「2級」といった格付けが存在することをご存じでしょうか。
普段の生活で何気なく目にする標識や地図の中に、その区分がひっそりと書かれていることがあります。
実はこの「級」の違いは、単なる呼び方の違いではなく、日本のインフラ整備において国と地方自治体がどのように役割を分担してきたかを物語るものなのです。
こうした区分には、戦後の復興期や高度経済成長期といった歴史的背景が色濃く反映されています。
現代では当たり前に利用している道路や川も、じつは国家の成長戦略や地域の暮らしを支える政策の中で位置づけられてきたのです。
この記事では、インフラに付された「1級・2級」という区分の仕組みと、その背後にある意外な歴史をひもといていきます。
インフラ区分の全体像
日本のインフラには、じつは“ランク分け”のような仕組みが存在します。
大きく全国規模で重要なものと、地域ごとに役割を果たすもの――その違いを区分して整理しているのです。
ただし、この区分の仕方はインフラの種類ごとに少しずつ異なります。川は今でも国と地方でしっかりと分けられていますが、道路や空港では過去にあった区分が廃止され、別の形で整理されています。そして漁港にいたっては、数字の並びが“逆転”しているというユニークな仕組みまであるのです。
つまり「インフラのランク付け」といっても一律ではなく、それぞれに歴史や背景が反映されているんですね。では具体的に見ていきましょう。
各インフラ別の具体例
① 道路(国道)

日本の道路の大動脈といえば「国道」。今ではすべて「一般国道」と呼ばれていますが、実は昔は一級国道と二級国道という区分があったんです。
戦後の道路整備期、国が管理する特に重要な路線は「一級国道」(1桁・2桁の国道)、それ以外で広域的に重要な路線は「二級国道」(昔の3桁国道)に分けられていました。例えば国道1号(東京~大阪)は、1952年に一級国道として指定された“元祖・国道”のひとつです。
ところが1964年の道路法改正でこの区分は廃止され、すべて「一般国道」に一本化されました。このときに面白い現象が起きます。それが「国道番号の欠番」です。
国道の番号は基本的に北から順に割り当てられています。ところが、よく見ると存在しない番号があるんです。
その代表が国道59号~100号の欠番。これは1964年の道路法改正で「一級・二級国道」が廃止され、すべて「一般国道」に一本化されたときに起きた現象です。
以降、新しい国道には3桁の番号をつけるルールになったため、この59号から100号はずっと空き番号のまま残っています。
さらに、路線の統合などで欠番になった番号もあります。たとえば昔は存在した109号や110号、111号なども現在は消滅しています。
●国道109号(秋田県横手市↔宮城県大崎市)→ 国道108号(秋田県由利本荘市 ↔ 宮城県石巻市)と統合
●国道110号(山形県山形市↔宮城県仙台市)→ 国道48号へ昇格
●国道111号→(国道102号と統合し国道45号へ昇格)
現在、国道は1号から507号まで番号が存在しますが、実際の路線数は459本。欠番を埋めずに3桁以上で増えていく仕組みなので、この空き番号は“歴史の名残”として残り続けるのです。
② 河川

川にもランク付けがあります。国土交通大臣が指定する一級河川は、治水(洪水対策)や利水(水利用)の面で国民経済上特に重要な水系に属する川で、原則として国が管理します。
例えば、関東を流れる利根川は一級河川で、「坂東太郎」と称される関東一の大河です。
近畿地方の淀川(大阪の“天下の台所”を支えた川)も代表的な一級河川と言えます。
一方、都道府県知事が指定する二級河川は、身近な生活用水や地域の治水に欠かせない川です。二級水系の数は2,700以上、支流も含めた川の数は7000以上に上ります。
皆さんの近くを流れている川も一級、二級河川かもしれません。
③ 漁港

日本は海に囲まれた「漁業の国」。なんと全国には2,860の漁港があるんです(2017年時点)。漁港とは一言でいえば「漁師さんたちのホームベース」。漁船が出入りし、魚の水揚げや整備が行われる拠点です。
漁港は規模や役割によっていくつかの種類に分けられています。
● 第1種漁港 :地域密着、小さな港。全国に2,000以上。
● 第2種漁港 :第1種より広い範囲をカバーするけど、全国区ではない中堅どころ。約500港。
● 第3種漁港 :全国レベルの大規模港。釜石(岩手)や舞鶴(京都)など約100港。
● 特定第3種漁港:第3種の中でも特に重要とされる13港。
八戸や気仙沼、焼津、下関など“日本の漁業の顔”とも言える存在。
● 第4種漁港:離島や辺境にある特殊な港で、漁場開発や避難のために欠かせないもの。
ここで面白いのは、道路や河川と比べたときの“番号の意味”。
道路や川では「1級」が最重要ですが、漁港は逆で、第3種が一番大規模。そして特殊な事情を持つ港だけが第4種として独立しているのです。数字がそのまま「大小」や「重要度」の順番を表していない、ちょっとトリッキーな区分なんですね。
ちなみに、日本には海に面していない県が8つありますが、そのうち滋賀県だけは琵琶湖のおかげで20漁港(すべて第1種)**を持っています。内陸県なのに漁港がある、というのもユニークな雑学ポイントです。
④ 空港
実は、かつて日本の空港は重要度によって「第一種空港」「第二種空港」(さらに「第三種空港」)に分類されていました。羽田空港や成田空港などは当時、最高位の第一種空港に位置づけられていたのです。しかし2008年の法改正でこの仕組みは見直され、現在では航空法や空港法に基づく新しい区分として「国管理空港」「会社管理空港」などが使われています。
例えば民間会社が運営する「会社管理空港」は、成田国際空港・関西国際空港・中部国際空港・大阪国際空港(伊丹)の4空港のみです。一方、羽田空港や新千歳空港、福岡空港など国が直接管理する主要空港は「国管理空港」と呼ばれます。なお、地方公共団体が設置・管理する中小規模の空港は「地方管理空港」と分類され、全国に50以上存在します。
名前や肩書きは変われど、要するに羽田空港や成田空港といった幹線空港が日本の空の玄関口として機能し、新千歳空港や福岡空港など各地域の拠点空港が大都市圏をつなぐ役割は今も昔も変わらないですね。
区分が生まれた背景
「そもそも、なんでインフラをわざわざ区分する必要があったの?」と思う方も多いかもしれません。
その答えは、戦後の日本が直面した“国づくり”にあります。復興や経済成長の真っただ中で、道路や川、空港を一気に整備するには、国が担当する“大動脈”と、地方が担う“毛細血管”をはっきり分ける必要があったのです。
道路では1950年代に「一級」「二級」という格付けが導入され、河川でも1960年代に「一級水系」と「二級水系」が登場しました。
空港も高度経済成長に合わせて格付けがされましたし、漁港も全国的に必要か、地域レベルで十分かを分けて整理されました。区分の裏側には、効率よく国土を発展させようという国の思惑があったんですね。
まとめ
インフラの区分は、ただの“ランク付け”ではなく、日本の発展の歩みを映す歴史そのものです。
普段何気なく通っている道や川、出張や旅行で使う空港、そして新鮮な魚が揚がる漁港。そこにはそれぞれの区分が生まれた理由と歴史が隠されています。知ってみると、いつもの風景が少し違って見えてくるかもしれません。
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