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【カワシマ印刷学】「特色印刷」を追ってみた【後編】

2024.11.21

みなさんこんにちは。

【前編】では、ある特定の色を作り出す「特色印刷」の概要やインキづくりについてご紹介しましたが、その作業の中には印刷オペレータの「職人技」が随所に込められているということをお伝えしました。

調肉作業
叩き伸ばし
刷り出し

そこで今回の【後編】では「印刷オペレーターのチャレンジ」として、2つの企画に挑戦していただきました。果たしてどんな結果になったのでしょうか!?

  1. チャレンジその①「CCMを最初の1回のみで特色を作ってみた」
  2. チャレンジその②「CCMを使わずに特色を作ってみた」

 

チャレンジその①「CCMを最初の1回のみで特色を作ってみた」

川嶋印刷で行われる特色印刷は【前編】でお伝えした通り、指定色となる色見本を特色インキ作成用ツール「CCM(コンピューターカラーマッチング)」を使って、配合するインキや数値を割り出してインキを作っていきます。その後試し刷りとCCMでの色確認を何度か行なった後、最終的に配合するインキの割合などを決定します。

そこで今回の「チャレンジその①」では「CCMの使用は指定の色見本の測定1回のみ」とし、以降CCMを使わずに、オペレーターの経験値でいかに指定の色に近づけることができるか、という挑戦をしていただきました。

出力見本と刷色見本(右上)
セレクトしたインキ缶と配合表

チャレンジャーは、この道20〜30年のキャリアを持つ女性オペレーターの2人組。タッグで今回のチャレンジに挑みます。

用紙は、表面がツルッとしていて光沢感のある「コート紙」で、必要な数量は100枚という設定にしました。ちなみに今回の指定色は、彼女たち的に初めて作る色だそうです。

審査員は、品質に関して人一倍厳しい眼力を持つ、印刷部の岩渕部長にお願いしました。

結果は、調整→確認を2回の作業で見事合格!写真でも分かるように、差異はほとんど感じられません。

1回目刷り出し
色見本との差異確認
CCM 画面
(左上のグラフがほぼ一致)

最初の測定以降CCMを使わずにこのくらいで合わせられたのはまずまずですね。
合格許容範囲の決め方によっても変わりますが、経験の浅いオペレーターだともしかしたら倍くらいの時間がかかるかもしれません。
ただ、私が一番すごいと思ったのは作業の過程そのものでした。

…それは一体どういうことでしょうか?

彼女たちは、最初のCCM測定で割り出された配合結果と異なるインキをあえてセレクトをしていました。

それは今回の絵柄面積・インキ特性・必要枚数・どの辺の濃度域で再現するかなど、さまざまな内容を考慮し、結果、CCMの測定数値よりも(今回の印刷において)最適と思われるインキを作ったんだと思います。

実際、色が決定されるまでの作業や作るインキの量も、無駄がなく素晴らしい結果でした。もちろん、CCMの結果通りに作っても色は再現できただろうし、以降の作業でもCCMを使えば具体的な数値が得られるので、品質と生産性はもっと上がります。

…との事。しかしそこで素朴な疑問が。

そんなに苦労して色を作るのなら最初から多めに作っておいたほうがいいのでは?

たくさん作っても余って捨てるほうが無駄です。
インキの混ぜ合わせって、一旦濃く(暗く)したらもう明るい色に戻せないんですよ。そうなると一から作り直しになるので。

仮に印刷途中でインキが足りなくなりそうでも、OKとなった配合データがあればまた簡単に作れるのでその方がリスクが少ないです。
一番理想的なのは印刷終了のタイミングでインキもなくなるという感じなんですが、なかなか難しいです。

…岩渕部長によると、同じ色でも紙質(艶のあるコート紙かしっとりとしたマット紙か)によっても、仕上がりや消費するインキの量が違うので、色を作る感覚や量が全く変わってくるとの事。

もっと言えば、印刷機に入れるインキの量によっても仕上がりの色が変わるのだとか(いっぱい入れると濃く、少なめだと薄く)。

その時々の状況において、いかに最善と思われるタスクを導き出せるかが職人の技術力なんですね。

コート紙(左)とマット紙(右)の比較

 

チャレンジその②「CCMを使わずに特色を作ってみた」

これまでの流れでもわかるように、特色印刷において強力なツールであるCCMですが、またしても素朴な疑問が…。

CCMが無かった時代はどうしてたんでしょうか??

ということで「チャレンジその②」は、お題となる見本(別の印刷機で過去に印刷したサンプル)に対しCCMを一度も使わず、どれだけ同じ色に近づけられるかという、さらなる高難度のチャレンジに挑んでもらいました!

まずは混ぜ合わせるインキの選定→インキ作り→1回目試し刷り→微調整、という流れで作業が進行。

ちなみに写真を見るとわかるのですが、実際に作られたインキの色とそのインキで叩き伸ばした結果は、色がこんなに違います。
(右下の画像参照)

特色を作る際はその「変化具合」も感覚値として捉えなければなりません。

セレクトしたインキ缶とお題印刷物
調肉&叩き伸ばし作業
色チェック
調肉したインキと
叩き伸ばした色の違い

「くすみ方が特段大きい」など、そのインキ特有のクセもあります。

オペレーター2人の作戦会議を聞いていても、今回はかなり難しそうです…。

そうこうしているうちに、ついに「これだ!」という色に辿り着いたようです。

早速、お題の印刷サンプルと、CCMなしで作ったインキで印刷したものをそれぞれCCMで測定、数値を比較してみました。気になるその結果は…。

なんと、ほぼ一致に近い配合率!ほとんど一発で決めてくれました!

見た目ほとんど同じのお題と
チャレンジした印刷サンプル
CCM 画面(左上のグラフがほぼ一致)

この素晴らしい結果に、岩渕部長はじめ周りのスタッフから感嘆の声が!これぞ紙(神)技!

お題を印刷した時のデータが記された解答を岩渕部長が持っていたのですが、若干の差異はあったものの、ヒントなしの状態で最終的にこの仕上がりに合わせたのは紛れも無い、彼女たちの知識と技術によるものです。

そもそも今回のお題は別の機械で印刷したものなので数値の完全一致はありえませんが、それを差し引いても素晴らしい結果となりました。

 

ご協力いただいた印刷部の皆さん、どうもありがとうございました!

お題と目隠しされた配合表

いかがでしたか?いくら技術革新が進んでも、やはり職人と呼ばれる人たちの「力」は必要不可欠なものでした。

知識や技術が不足していると時に判断を誤り、色作りに失敗して一から作り直したり印刷機のローラーやインキを入れるツボを洗浄しなければならなかったりと、材料費・水道光熱費・時間と労力など無駄なコストがかかってしまいます。

CCMを上手く活用しながらオペレーターの職人技をプラスする事で、高品質の印刷物を無駄なく作ることができます。

また、一度作った色の配合データ管理を行うことで、同じ色を時間をかけずに何度でも再現できるので、安定した品質と生産性の向上につながります。

私たち川嶋印刷は、長年培われてきた知識と技術で高品質な製品を効率良く生産し、今までもそしてこれからも、「よりよい情報伝達をお手伝い」する職人集団であり続けます。

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